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「声の網」星新一

「声の網」星新一

初めて星新一を読みました。
12話の短編として読むこともできますが、全てを読んでやっと話の全体像が掴める長編小説のようでもあります。
この小説の舞台は、電話が進化してさながら今のインターネットのように様々な使い方がされている時代の、とあるマンションです。
そのマンションの名称は”メロンマンション”というのですが、1つ目の話は1月にメロンマンションの1階で起きた出来事、2つ目は2月にメロンマンションの2階で起きた出来事……という構成になっています。
1話ごとにはっきりとした起承転結がある訳でもなく、最終章でオチや結末がある訳でもありません。
しかし、人間の不完全さや弱さがしっかりと描かれています。
現実の世界では物が意思を持って人を支配するということはありえませんが、物を利用する人間の側は物に支配されやすい性質を持っていると思います。
例えば、暇つぶしに始めたゲームがおもしろすぎて、ゲームをする暇を作りたいが為に他のことが疎かになってしまう人は昔からいたことでしょう。
また、参考程度に読み始めた雑誌に書かれている事が、いつの間にかその人の絶対的な価値基準になってしまうようなことも、取り分け若い人にはありがちです。
感情のある人間に取って、便利な物や楽しい物と距離を置いて上手く付き合うのは難しいことです。
私自身、携帯やパソコンを始めとした文明の利器を楽しんで利用しているのですが、時々「こんなに便利でいいのかな」と漠然とした不安を感じることがあります。
この小説を読んでいる間じゅう、それをつつかれているような気分になりました。
あと、内容とは関係ありませんが、絵が可愛いです。
後味の悪いストーリーの良い箸休めになっていました。

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